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教えて苫米地先生「そのゴールは本当にあなたのゴール?!〜コーチが導く、クライアントの自問自答〜」

2025/9/ 2 更新

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今回の講義では、「差別のない世界」というテーマを手がかりに、ゴール設定の本質を探ります。

私たちは「自分のゴール」を持っている――。
そう信じ、日々努力を重ねている人は多いでしょう。

けれども、そのゴールは本当に「自分自身」のものなのでしょうか。
親や教師、友人や社会の価値観に影響され、知らず知らずのうちに刷り込まれた理想を、「自分の願い」と思い込んではいないか。

ドクターは言います。
「自我を変えても意味はない。必ず元に戻る。変えるべきは"ワールド"だ」と。

自我やブリーフシステム(信念体系)を書き換えることではなく、現状の外に新しいワールドを描き、その臨場感を高めること。

そうして初めて、本当の変化が訪れるのです。

自分が掲げるそのゴールは、本当に心から望むものなのか――。
コーチの存在が導く、「自問自答」の意味が明らかにされていきます。





Vol.1 自我を変えても、世界は変わらない!?

――今日は「差別をなくす」についてお聞きしたいと思います。

苫米地 それだったら、まず、「自我の定義」を再確認することが重要だよね。

――自我の定義ですか!? 

苫米地 そう。「差別をなくす」って「差別のない世界を作る」ことでしょ? 俺はそれは、コーチングを広めた結果として実現できるんじゃないかと思っているんだよね。ただし、それは「みんなの自我を変えることができれば、差別のない世界は作ることができるよね?」っていう事ではないんだよ。コーチングによって結果的に自我は変わるけど、自我を変えることで何かをしようとはしていない。

――どういうことですか? 自我が変わるから僕らは変わるんじゃないんですか?

ong>苫米地 もちろん、変わるよ。でも、それは結果としてね。だから、そこで自我の定義なんだよ。自我とはいつも言ってるように「宇宙を入力して自分を出力する部分関数」のことだよね。裏を返せば、自分がわかれば、宇宙もわかるってこと。もう一つは、現代分析哲学的な定義で、「自分にとっての重要度で宇宙を並び替える関数」だよね。例えば、ペットボトルとお母さんを比べてどっちが大事か、iPadとAndroidではどちらが重要なのか、を決めることができるのが自我だよね。これがお釈迦様ぐらいになると、ペットボトルとお母さんでどっちが大事か決められない、っていう話はいつもしてるよね(笑)。ただ、そういう話を聞くと、にわかコーチや、間違ったコーチングの本を読んだ人は、「やっぱり自我を書き換えることが重要だ」と思っちゃうわけでしょ? だって、「差別しない人になりましょう」というのは、人種に対する重要度を変えればいい、っていうのも、一つにはあるわけだからね。白人も黒人も日本人もみんな大事、って思えばいいわけで、こんなふうにみんなの重要度が変われば差別のない社会は実現できるよね?

――できると思います。

苫米地 でも、それじゃダメなんだよ。なぜかというと、自我はすぐに元に戻るから。自我がすぐに元に戻る理由は簡単で、ホメオスタシスが働くから。いつも言ってるように、映画を見ながら涙を流したり、驚いたりするのはホメオスタシス=恒常性維持機能が情報空間にまで広がってるからだよね。だから俺たちは、作り物の映像だとわかっていても、感動したり、怖くなったりするわけだ。ただし恒常性維持機能は、名前の通り、恒常性を維持するシステムだから、びっくりしてもすぐに元に戻るんだよ。当たり前だよね、映画館を出たあとまで驚いていたり、涙を流し続けていたりするのはマズいから(苦笑)。これは風邪を引いた時もそうだよ。恒常性維持機能によって熱が出て体内の細菌を殺そうとするわけだけれど、細菌が死んだら、熱も下がる。なので、自我を変えるというのは、一時的なことなんだよ。これが、自我を変えようとするのが間違っている、という理由だよ。
 じゃあ、変えるのは何か、というとワールドだよ。現実世界ワールド1(W1)からゴールの世界であるワールド2(W2)に移行すること。その結果として自我は変わるわけ。自我とはつまり、ブリーフシステムだよね。

――「まずは自分を変えればいいんだ」っていう解決法は少し違うんですね。

苫米地 さっきも言ったけど、それが勘違いなんだよ。優先するのは「ワールド」を変えること。「ワールド」は「宇宙」と言い換えてもいいけど、「宇宙」を変えるってことは、仏教的な論理でいう「一人一宇宙」ね。自分が宇宙を生み出していて、その宇宙の中心に自我関数があることは間違いないけど、自我関数を変えようとしても必ず、元に戻る。その、わかりやすい例が財務省だよ。

――財務省!?

苫米地 ちょっと前まで「財務省解体!」ってデモをやっていたでしょ? あれがもしも成功して財務省が本当に解体したとしても何も変わらないよ。なぜなら、財務省の自我は増税だからね(笑)。それをあのデモによって変えることに成功したとしても、すぐに元に戻る。たぶん、財務省がなくなったとしても、歳入庁と財務担当庁みたいに、2つの庁に分かれるだけ。国のシステムが変わらないとダメ。財務省のシステムというよりは国家全体のシステムなのに、財務省に対して、いくら「違う!」とか言ってもあまり意味がないし、必ず元に戻る。

――ポイントがズレているんですね。

苫米地 問題を矮小化し過ぎているんだよ。自分が変われば世界は変わるかもしれないけど、自分が元に戻れば、世界も元に戻る。そして、自我はちゃんと元に戻るようにできている、ホメオスタシスによってね。だから、変えるのはワールドのほうなの。W1をW2に変えるしかない。そのためには、ゴールを現状の外に設定するしかない。
 差別のない世界がゴールなら、ブリーフシステムを変えようとするのではなく、現状であるW1の外に、差別のない世界W2を設定して、そこへの臨場感を上げていくということね。すると、結果的にブリーフシステムも変わっていく。これが、コーチングでやっていることだよね。

(Vol.2に続く)

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